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経済ニュースここに注目!

2010年06月25日

第 11 回 歴史から学べ:1873年の経済恐慌から学べること

2008年11月14日マネックス・ユニバーシティのオンライン講義に講師として初めて参加させていただきました。当時はリーマンショック後の金融危機が続いていた状況で、世界恐慌が起きるかもしれないとマスコミで大騒ぎになっていた時です。オンライン講義受講者からはいくつか事前質問があり30分の番組の中で最後5分程いくつかの質問に答えさせていただきました。質問の一つにあったのが、「これからどうなるだろうか?」です。

私自身は予知能力があるわけでもなく未来のことは分かりません。しかし過去の歴史を学べば参考になります。オンライン講義でグラフを描きながら簡単に説明したのが1929年の大恐慌発生後の株価の動きです。1929年大恐慌が発生し、米国の株価は大暴落しました。当時のフーバー大統領は自由放任主義をとっていたため、株価の動きはマーケットにまかせて1933年まで8割近く暴落しました。失業率は25%に達し、仕事があっても賃金はかつての10分の1というひどい状況でした。

1933年ルーズベルト大統領に変わると有名なニューディール政策を打ち出し、公共投資を通じて政府がおカネを使うことで景気復活を実現しました。株価も1937年までに、大恐慌発生以前のレベル近くまで戻りました。オンライン講義ではこの教訓を基に国が景気対策でおカネを使うようになれば、株価も持ち直してくるかもしれないことを説明しました。しかし世の中全体が暗く後ろ向きな状況だったせいか、あまり受け入れられなかった気がします。

セミナー終了後、中国政府がすぐに54兆円近い予算を組んで景気対策に動き中国経済は復活しました。更に米国や他の国々、日本も中国より遅めでしたが補正予算を組んで景気対策を実行し世界経済はかなり回復、株価もある程度まで戻りました。もし歴史の教訓を学んでいれば、株価の大暴落が起きてもパニックになることはないでしょう。また、経済ニュースをよく見て社会の動きを理解すれば、逆に大きな投資チャンスを得ることもできるでしょう。しかし多くの場合、人間は世論に流されて行動してしまうものです。

経済や投資の歴史を学ぶ上で私自身、大変参考になっているのが次の2つの本です。

一つは「ウォール街のランダム・ウォーカー」(バートン・マルキール 著 日本経済新聞出版社)です。株式投資に関する有名な本で、読んだことのある方も多いと思います。本の前半部分には過去発生した様々なバブルについて紹介されています。長期投資をしているとバブルには何度も遭遇することになります。いかにバブルに巻き込まれないようにするかが、個人投資家にとって重要な課題となりますが、過去の歴史を知っていれば、今、バブルか正常な状態かの判断材料になります。私はこの本を読んでいたおかげで米国の住宅不動産バブルを悟ることができました。

もう一つは「新版 西洋経済史」(角山栄 編著 学文社)です。私は大学の経済学部国際経済学科の卒業ですが、授業の一つだった西洋経済史のテキストとして使用されていた本です。大学時代に使用していた教材でいまだに持っていて時々読み返す唯一のテキストです。西洋を中心に中世から第2次世界大戦後までの経済の歴史について解説した本ですが、具体的なデータやイラストが数多く使われていて他の経済の歴史書に比べ分かりやすくなっています。リーマンショックが起きたときも、この本に書かれていた1929年当時何が起きてどうなったかという部分は大変参考になりました。

この本の中で私が今、一番興味を持っているのが、1873年に起きた世界恐慌に関する歴史の部分です。日本はまだ明治の始まりで株式市場そのものが存在しなかったこともあるせいか、1873年の恐慌はほとんど知られていません。例えば「Wikipedia」という世界中の人が共同で作成するインターネット百科事典には、英語版では「Panic of 1873」という題名で解説がありますが、日本語版には存在しません。

1873年の世界恐慌とは、当時世界経済の覇権国だった英国で穀物価格の暴落が発生、オーストリア・ウィーンの株式市場が大暴落して欧州や米国の株式市場に連鎖していった歴史上初の世界恐慌です。この事件を境にして英国は世界経済の覇権国の地位から転落し、通貨ポンドも基軸通貨の地位を降りるきっかけにもなりました。代わりに台頭してきたのが、当時、新興国と呼ばれた米国やドイツです。覇権国としての英国の力が弱まったため、世界は多極化の方向に進みました。1873年以降、世界経済は自由放任主義から独占・保護主義へと変わり経済的な植民地主義が盛んになりアジアやアフリカへの欧米列強の進出がより盛んになりました。
リーマンショック以降、世界経済の流れを見ていると1873年以降に起きた事象と似ています。覇権国としての米国の力は弱まり基軸通貨としてのドルの地位も不安定です。新興国としてBRICsが登場しG8がG20に変わったように欧米先進国の力は弱まり、新興国の力が増しています。特に中国の影響力は米国に並ぶほど大きくなってきています。また最近ではアフリカに対する中国やインドの土地買収に絡んだ進出が現地住民にトラブルを引き起こしており、国連でも問題になっています。

2010年6月19日中国政府は人民元の為替レート改革を発表しました。17日には国営ラジオが、これまで香港やマカオ、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国との貿易のみ認められていた人民元建て決済がすべての取引相手国に適用されることを中国国務院が決定したことを報じています。

当コラム2010年3月19日掲載 第4回「人民元は国際化する? 中国経済最新事情を知るにはコレを読め!」では中国が人民元を国際的な基軸通貨にしようという動きを紹介しました。今回の動きは人民元の国際化へ更に拍車をかけそうです。1873年に起きた、英国ポンド通貨基軸体制から多極化へと移り、第2次世界大戦後のドル基軸体制へ変わっていった歴史を思い起こすような流れです。

今後どうなるかは誰にもわかりません。しかし 投資戦略を考える上で、"賢者は歴史から学び、愚者は経験から学ぶ" という言葉もあるように、個人投資家は不確定な未来についての一つの指針として、歴史から学ぶことが重要でしょう。

(参考)

wikipedia 「The panic of 1873」


第4回「人民元は国際化する? 中国経済最新事情を知るにはコレを読め!」


本日のポイント
★歴史から学んで経済ニュースを見ることが未来を考える指針となる

★自分なりの歴史観を持つことが投資戦略を考えるには必要

★今の世界経済は1873年以降の世界経済の状況に似ている


コラム執筆:前田 紳詞氏 
株式会社FP診断サービス代表取締役

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