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総合商社の眼、これから世界はこう動く

2017年02月21日

第160回 「クルーズ船が運ぶ地方の活力」

今年も春節(中国の旧正月)に大勢の訪日外国人観光客がやってきた。1月は同月として過去最高の230万人が訪日し、その勢いは衰えを見せていない。昨年一年間でみても2,403万人と過去最高を更新したところである。こうした勢いの原動力として「訪日クルーズ旅客の急増」に注目したい。クルーズ船を使って日本を訪れる外国人観光客数を2013年からみると、同年17.4万人から、2014年41.6万人(前年比139%増)、2015年111.6万人(同168%増)、2016年199.2万人(同78%増)と、訪日観光客全体の中での割合はまだ小さいものの、年平均約130%増という驚異的なペースで伸び続けている(図表1)。


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そもそもクルーズ船とはどのような船なのか。まだそれほど身近な存在ではないかもしれないが、船内の客室で寝泊りができ、食事やショーなどのアトラクションを楽しみながら、様々な寄港地を移動する船のことである。大浴場から大海原を一望できるぜいたくな船もある。寄港先では観光や買い物を楽しむことができる(ここが本稿のポイントであり後述)。また、眠っている間に次の目的地に移動できるので効率的である。料金は高めのイメージもあるが、1泊4万円を超える「ラグジュアリー」タイプから1万円を切る「カジュアル」まで幅広い。

世界のクルーズ人口2,400万人のうち8割が北米と欧州であるが、近年の特徴はアジアが大きな伸びを示していることである。その中核は中国であり、日本にやってくるクルーズ船も8割が中国発着である。中国人観光客の多くは安価な「カジュアル」のツアーを利用する団体客である。成長著しいアジアのクルーズ市場には外国のクルーズ船社の進出が相次いでおり、上海から日本に就航する大型クルーズ船の投入や、日本海周航クルーズの増便などが計画されている。

好調なクルーズ船の来航を背景に、政府は昨年、2020年の訪日クルーズ旅客500万人という目標を掲げた。この実現に向け様々な施策が実施されており、日本のクルーズ市場はこれからも拡大していくことになろう。

インフラ面では、クルーズ船受け入れのための港湾整備が進められている。これまではクルーズ船の寄港が急増する中、せっかく寄港の要望があっても予約を入れられず、チャンスを逃してしまうケースも生じていた。こうした状況を是正すべく、既存の物流岸壁を活用したクルーズ船受け入れに向けた改良工事が各地で行われようとしている。さらに今後は、官民連携によるクルーズ船専用の国際クルーズ拠点も整備される見通しであり、横浜港、清水港など6港湾で具体化しつつある。加えて、寄港地を全国に展開する取り組みが進められており、クルーズ船社、自治体等が参加する商談会が開かれているほか、寄港地に関する情報発信も熱心に行われている。

クルーズ船について意義深いのは、地方創生に大きく貢献できるという点である。クルーズ船が運ぶ大勢の乗客は、寄港地で観光や買い物を行い、地域経済に寄与している。中国人観光客を中心とする「爆買い」は以前ほどのすごさはないが、それでも買い物やグルメを中心に外国人観光客の消費意欲は旺盛である。空路や陸路でのアクセスが悪い場所でも、適した港があればクルーズ船は行くことができる。クルーズ船の振興は、観光と地方創生の相乗的な発展をもたらす効果的な施策といえよう(図表2)。

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今後はクルーズ旅客の多様化も見込まれ、観光や地方創生に新たな形で波及してくるかもしれない。これまではクルーズ旅客は中国からの団体ツアー客が多かったが、今後は個人旅行者も増えてくるであろう。これに伴い、地域面では、中国に近い西日本だけでなく、東日本も含めて寄港地のニーズが広がり、寄港地の全国展開が後押しされる可能性もある。

また、個人旅行者は観光に対するニーズや関心が様々であり、求める観光のレベルも高い。そうした個人旅行者を惹きつけ、繰り返し来てもらうためには、寄港地の観光の魅力を向上させる必要がある。そのためには、例えば、景勝地めぐりと免税対応のショッピングモールでの買い物を組み合わせた楽しみ方を提供する、あるいは港から内陸の観光スポットまでのアクセスを整備して利便性を高めることなどが有効であろう。

急速に伸びてきた日本のクルーズ市場が一段の広がりを見せるのは、まだこれからである。クルーズ船の盛り上がりが全国津々浦々まで地方創生の活力を送り届けてくれるものと期待している。

コラム執筆:金子 哲哉/丸紅株式会社 丸紅経済研究所

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