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総合商社の眼、これから世界はこう動く

2017年03月21日

第162回 「CO2フリー水素の普及に向けた動き」

水素は、利用段階ではCO2を排出しないため、地球温暖化対策に大きく貢献すると考えられているが、現在日本では化石燃料由来の水素が主に用いられており、製造段階ではCO2が発生する。国は、2016年3月に改訂した「水素・燃料電池戦略ロードマップ」において、2040年頃をターゲットとして、化石燃料からの水素製造にCO2回収・貯留(CCS)等を組み合わせることや、再生可能エネルギーを活用して水素を製造することで、よりCO2排出が少ない水素供給システムを確立することを目指している。

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今月7日、経済産業省は、水素・燃料電池戦略協議会のもとに設置した「CO2フリー水素ワーキンググループ(WG)」において、将来的なCO2フリー水素の利活用拡大に関する報告書をまとめた。同WGでは、再生可能エネルギーの余剰電力から水素を製造するPower to Gas(P2G)技術を再生可能エネルギーの導入拡大への対処に応用しつつ、将来のCO2フリー水素の利活用に向けた足がかりとすべく、現状の課題の整理や今後の対応の方向性について検討を重ねていた。

報告書は、P2G技術の活用や水素サプライチェーンの低炭素化などとともに、CO2フリー水素利活用拡大に向けた制度設計が必要であることを提言している。CO2フリー水素の製造コストは、水電解装置の設備コストが高いため化石燃料改質よりも高くなる傾向があるが、その環境価値が適切に評価される仕組みがあればCO2フリー水素の利活用拡大につながる可能性がある。現在、CO2フリー水素の定義はなく、当然CO2排出量に係わる算定方法も存在しないため、既に定義が整理されている欧州のCertifHy Projectを参考に、日本でも、水素の環境価値を顕在化させるべく、官民での検討を進めるべき、と提言している。
また、CO2フリー水素の取引円滑化に向け、託送供給、グリーン電力証書、J−クレジット制度などの活用の検討を提案している。さらに、水素ユーザーがCO2フリー水素を選択するために何らかのインセンティブを付与する制度を検討すべきとし、発電段階では水素の省エネ法上の取り扱いを検討するとともに、小売段階ではエネルギー供給構造高度化法における水素エネルギーの環境価値を評価すべきとしている。

現在、国内でP2Gの技術実証事業がいくつかなされているが、福島では、世界最大規模の水素エネルギーシステムの技術開発・実証事業に向けた取組みが進んでいる。今月2日、福島新エネ社会構想実現会議の下で「再生可能エネルギー由来水素プロジェクト検討WG」の第1回会合が開催された。同WGでは、技術課題だけでなく、実証の具体的な場所も検討する模様である。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けたP2G技術のショーケース化は着実に進行している。長期的にP2Gを活用した再生可能エネルギーの導入拡大がなされるためには、技術開発力だけでなく、CO2フリー水素の環境価値を評価する仕組み作りを整備することも重要であると考える。今後の水素・燃料電池協議会等の議論に注目していきたい。

コラム執筆:松原 祐二/丸紅株式会社 丸紅経済研究所

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