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総合商社の眼、これから世界はこう動く

2017年04月04日

第163回 「急速に拡大している中国の共有経済市場について」

ホームシェア、ライドシェアを初めとする、いわゆる共有経済(シェアリングエコノミー)が中国で急速に成長している。中国国家情報センターによると、2016年中国における共有経済市場の取引総額が34,520億元(対前年比103%増)、融資規模が1,710億元(対前年比130%増)、また参加・利用者数が前年より1億人も増え、総人口の約半分である6億人を突破した。共有経済はイノベーションが最も活発な領域となりつつあり、国民生活の利便性向上にも寄与している。

1.共有経済の定義及び内容
生産機械のリースなど、使用権の共有を特徴とするビジネスモデルが昔からある一方、本文で言う共有経済は、主に多様なニーズを満たすため、企業または個人が所有している有形資産(住宅、車、服装など)、無形資産(ナレッジ・サービスなど)の使用権がインターネットプラットフォームを介して再配分される経済活動を指す。従来の共有モデルに比べ、①インターネットプラットフォームが基礎となる、②大衆が参加する(参加・利用しやすい、参加者・利用者の量が多い)③対象物の範囲が広い(個人の遊休資産、ナレッジなども共有の対象になる)、等が特徴として挙げられる。交通、宿泊、医療、旅行など様々な分野(図1)で共有経済の属性のある企業が続々と現れ、(注1)「ユニコーン企業」として世界的に注目されている企業もある(図2)。


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注1.ユニコーン企業とは、評価額10億ドル(約1130億円)以上かつ非上場のベンチャー企業。
2017年2月17日時点、CB Insightsが公表した186社のユニコーン企業のうち中国企業が42社で、そのうち15社は共有経済と関連する企業と見られている。

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2.共有経済市場拡大の背景
中国の共有経済市場が急拡大している理由は、「参加・利用者からの支持」と「政府による支援」との2つにあると考えている。
参加・利用者の支持が得られた背景には、①資源配分の不均等性、資源の有限性、②資源の利用効率の低さ、③世界的な格差拡大、④インターネットを始めとする情報技術の進歩、⑤「所有」から「利用」へとの消費観念の変化、等が要因として見られる。
2015年時点全国範囲で5,000万ヵ所以上の駐車スペースが足りないと報道されており、特に主要都市(図3)では駐車場という「資源」が不足していると言える。一方、団地専用の駐車場など、平日の日中には殆ど使われていない個人専用の駐車スペースが所有者にとって遊休資産となってしまい、利用効率が悪いのも現状。こうした中、スマホアプリなどのインターネットプラットフォームを介して、個人所有の駐車スペースを時間帯限定で貸出すといった駐車場シェアリングサービスが人気を呼んでいるのである。

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政府の支援については、昨年共有経済が初めて政府活動報告に盛り込まれるなど、一連の関連政策(図4)が打ち出され、共有経済の発展を促進する方針となった。促進の背景には、主に①参加しやすさがもたらす就業促進効果、②大衆まで巻き込む形での全国規模のイノベーションの実現で産業の高度化を加速させる期待、③資源の有限性などによる一部の社会問題を解決・緩和する効果の発揮、等の政府の狙いがあると思われる。

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3.今後の発展が期待される共有経済
中国市場の共有経済はまだ発展の初期段階にあり、製品・サービスが同質化で価格競争に陥りやすいなどの問題が存在しているが、前述した背景・理由により、市場規模はまだ大きな発展余地があると見られている。国家情報センターの予測によると、共有経済関連の取引総額は、2020年に同年GDPの10%、2025年に25%を占めるほどの規模まで拡大する。
急速な成長を遂げるために、企業などの参加者によるイノベーションが不可欠だが、政府の後押しも重要だと思われる。①社会信用システムの構築:情報プラットフォームが基礎で、大衆の参加が特徴・条件となっている共有経済には、社会信用システムの整備が市場の健全な発展にとっての必要な条件である。昨年末政府が一連の政策を発表し、社会信用システム構築を加速しようとしている。②バランスの良い奨励、規範政策・法律の整備:新たなビジネスモデルの創出が、既成の利益配分体制に衝撃を与える可能性があるため、関連主体間の利益調整は困難と思われる。足元では発展促進の方針が定められたものの、具体的な政策において、ネット配車サービスの就業者に戸籍を要求するなど、規範化を求める政策は多く、奨励を目的とするものはまだ少ないと見られる。
共有経済は、業界横断的なイノベーションを起こし、中国政府が図っている産業構造の高度化に貢献するなど、沢山の可能性が秘められている領域として、今後益々発展すると期待される。

コラム執筆:劉 楊/丸紅株式会社 丸紅経済研究所

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