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総合商社の眼、これから世界はこう動く

2017年10月31日

第179回 「『みちびき』がみちびく日本の第4次産業革命」

カーナビ、スマホなどで広く利用されているGPS。人工衛星からの測位情報を利用して、自分が今どこにいるかがわかる仕組みのことだ。まもなくこの精度が向上し、社会が大きく変わっていく可能性があることをご存知だろうか。

その鍵となるのが、わが国の人工衛星「みちびき」である。みちびきの1号機は2010年に、2~4号機は今年打ち上げられ、現在4機が宇宙空間を飛んでいる。みちびきは日本が独自に開発した測位衛星であり、既存のGPSを補完・補強することによって測位の高い精度と安定性を実現することが期待されている。そもそもGPSは米国が運用している31機のGPS衛星から届く電波をもとに利用者の位置を割り出すシステムであるが、複数のGPS衛星から電波を受信する必要があるにもかかわらず、日本では高いビルや山などが多いことから電波がさえぎられてしまい、正確な位置を示すことができないことも多かった。また、GPS衛星の信号自体も10m程度の精度にとどまり、決して十分なレベルとは言えなかった。これに対しみちびきは、8の字を描く特殊な軌道(準天頂軌道)を飛ぶことにより日本の真上の滞在時間が長くなり、GPSの電波が届きにくい場所にも高い角度から信号を送ることができるようになる。また、GPS衛星と同様の位置情報を送信するため、利用者にとって受信可能な測位信号が増え、測位の安定性も高まる。さらに、GPSの補強信号を送信する機能を有しており、GPSで生じる電離層による誤差が改善され、測位制度は数cm程度という驚異的なレベルまで向上する。こうしたみちびきの高精度の測位サービスは2018年度から開始される予定であり、さらに2023年からは7機体制での、より安定的な運用が行われる計画である。

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実は衛星を用いた測位システムを開発しているのは、米国や日本だけではない。ロシアはグロナス、欧州はガリレオ、中国は北斗、インドはNAVICと呼ばれる独自の衛星を打ち上げ、自前の衛星測位システムを構築することに躍起になっている。とはいえ、測位精度は他国がおしなべて数m程度であるのに比べ、みちびきは数cm程度と格段に高く、わが国が他国を大きく引き離しているのである。

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みちびきによる高精度の測位情報が提供されるようになると、それを利用した様々な新しいアプリケーションが生み出されていくことになろう。例えば、今後本格化する自動運転の開発においては、運転中の車両位置を正確かつ継続的に把握することが肝となるが、みちびきからの信号によりこのハードルがクリアされ、自動運転化が大きく進展することが期待される。また、農業分野では、精度の高い位置情報に基づく農業機械の無人走行やドローンの活用などが促され、農業従事者の減少や高齢化が進む中でも生産性を高めることが可能になる。みちびきは日本からオーストラリアにかけての上空を飛ぶことから、アジア太平洋地域へのサービス展開も視野に入っており、将来的な利用機会の広がりも見込まれている。

今、世界ではIoT、ビッグデータ、人工知能(AI)といった第4次産業革命の波が押し寄せてきている。各国ともこうした技術革新を取り込んだ社会の構築を目指しており、ドイツが「インダストリー4.0」の下で製造業の高度化を進めるなど、国をあげた取り組みが行われている。わが国においても政府が「ソサエティー5.0」を掲げ、第4次産業革命の先端技術を隅々まで導入した経済社会を築き上げようとしている。みちびきが提供する高精度の測位情報は、まさにそうした社会の実現において欠かせない役割を果たすものだ。さまざまな要素が必要なソサエティー5.0というジグソーパズルで、みちびきはその絵を構成する重要なピースの一つとなっているに違いない。


コラム執筆:金子 哲哉/丸紅株式会社 丸紅経済研究所

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