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広木隆の「新潮流」

2015年05月11日

【新潮流】第225回 シャーロット

◆日比谷の日生劇場で『嵐が丘』の舞台を観た。主演の堀北真希はおっとりとしたお嬢さんのイメージだが、この芝居では激しい役柄を見事に演じきった。イングランド北部ヨークシャーの荒涼たる風景が脳裏に浮かんだ。その地に立つ屋敷で繰り広げられる愛憎劇にどっぷりと引き込まれた2時間半だった。

◆イングランドといえば、注目された英国の総選挙はキャメロン首相率いる現政権の続投が決まったが、開票前はまれにみる混沌とした情勢だった。保守党も労働党も多数派を形成できず、議会が中ぶらりんの状態となる「ハングパーラメント」という言葉が盛んにメディアに流れた。ところが蓋を開けてみれば保守党の単独過半数獲得という「まさか」の結果。これは「ロイヤルベビー効果」だといわれている。キャサリン王妃の第2子誕生という慶事が、与党保守党への追い風となった「シャーロット効果」だというのである。

◆『嵐が丘』は作家エミリー・ブロンテが1847年に発表した「世界十大小説」のひとつと謳われる小説が原作。エミリー・ブロンテはブロンテ姉妹のひとりとしても知られる。ブロンテ姉妹は英国のヴィクトリア時代を代表する小説家の3人姉妹だが、3人とも早世だった。この他の兄姉もみな若くして死去した。ところが、短命だったブロンテ家にあって、ブロンテ姉妹の父親だけが例外的に長寿だった。父パトリックは妻と6人の子供全員に先立たれた後もひとり暮らして84歳まで生きたという。

◆晩年の彼の暮らしはどんなものだったのだろう。面倒をみてくれる家族もなく、無論19世紀の英国に介護制度が確立していたとは思えない。ひとごとではない。150年余りを隔てた現代の日本でも老後の不安が蔓延している。第104回「長生き」で、フィデリティ退職・投資研究所所長の野尻哲史さんが「老後難民」という言葉で警鐘を鳴らしていることを紹介した。先日も日経新聞・編集委員の田村正之さんが『老後貧乏にならないためのお金の法則』という本を書かれた。同書によれば、2050年には、女性の6割、男性の4割が、90歳まで生きる時代になる。「死にたくなるほど長くなった老後」を生きるのは楽ではない。

◆短命だったブロンテ姉妹のなかではもっとも年長のシャーロットがいちばん長く生きた。小説「嵐が丘」はエミリー存命中は不評だったが、エミリーの死後にシャーロットが第2版を編集したことがのちの再評価につながったとの説もある。日本でおなじみの「シャーロット」といえばNHK朝ドラの『マッサン』でヒロインを演じたシャーロット・ケイト・フォックス。こちらのシャーロットもブロードウェイミュージカル『シカゴ』の主役に抜擢されるなど活躍が続いている。「シャーロット」は活気や生命力にあふれたイメージがある。少子高齢化の問題は一朝一夕に改善しないが、ロイヤルベビーの「シャーロット効果」が日本にも波及して出生率が高まってほしいものだ。『嵐が丘』の舞台を観ながらそんなことを想った。堀北真希演じるヒロインの名はキャサリンである。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆

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