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特集1

2017年12月01日

第54回 米国シェールオイルのコストヘッジは困難【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

米国株は順調に上昇しています。米企業の業績拡大を背景に、株価の上昇基調は今後も続きそうです。ハイテクバブルを想起するとの声もあるようですが、当時との大きな違いは株価水準の裏付けに企業収益があることです。株価は期待や希望で上げているわけではなく、企業収益を背景とした正当な価値の反映といえます。クラウド事業など新しい業態での収益の拡大も確認されており、今後も業績拡大を背景とした株価上昇が続くと考えるのが妥当でしょう。現在の景気循環や株価変動サイクルなども考慮すると、株価上昇は2019年後半から2020年程度まで続く可能性が高いと考えています。

株式などのリスク資産の価値が上昇する中、低迷しているのが原油価格です。米国がシェールオイルを増産するので、需給バランスの改善が進まず、原油価格は上昇しづらいと考えている方が多いようです。そこで、今回は原油市場の今後を占ううえでのポイントをふたつご紹介したいと思います。ひとつは、協調減産の効果についてです。11月30日にはOPEC加盟国とロシアなどの非加盟国が会合を行い、18年末までの減産延長を決定しました。これまでの減産でもかなりの在庫調整が進んでいたのですが、これでさらに在庫調整が進むことになります。この減産だけで年間8億バレルも在庫調整になります。経済協力開発機構(OECD)加盟国の石油在庫全体が30億バレル、現在の米国の原油在庫が4億5,000万バレルですから、減産のインパクトがいかに大きいかがわかります。さらに今回の会合では、これまで減産を免除されていたナイジェリアとリビアにも生産枠が設定されました。これで生産量の増加の可能性は低下しました。これはきわめて大きな材料といえます。

もうひとつは、米国のシェールオイル企業が保有資産に対するヘッジをしづらい状況にあるという点です。コモディティの生産者は、将来に価格が下がった場合でも収益を確保するために、保有資産に対して先物市場などで売りヘッジを行います。先物価格が収益確保に見合う水準であれば問題ないのですが、そうでない場合には、ヘッジができません。そうなると、生産ができないことになり、需給は引き締まることになります。WTI原油のフォワードカーブは現在、バックワーデーション(逆ザヤ)になっています。これは、先物価格が現物価格よりも安い状況にあることを示します。逆に言えば、現物価格が先物価格よりも高いことになります。これはコモディティ特有のパターンであり、現物需給がひっ迫しているときに見られる典型的なパターンであり、まさに現在の原油市場の状況を反映しているといえます。この状況を「先物価格が安いので、先安観がある」と考えるのは誤りです。コモディティは現物が中心であり、先物市場で言えば期近価格が基準です。先物価格に対して期近価格が上昇しているのですから、相場は強いと考えられるのです。さて、WTI原油先物市場は、18年は平均すると56.45ドル、19年は53.50ドル、20年は51.95ドル、21年は51.05ドル、22年は50.65ドルです。つまり、来年以降の原油の販売価格を先物市場でヘッジしようとしても、平均では50ドルをわずかに超える水準でしかできません。これではシェールオイル企業は収益が確保できず、稼働準備ができている石油掘削リグの稼働もできません。また、原油価格が上昇した場合でも、期近価格だけが上昇し、先物価格の上昇が限定的となれば、先物市場でのヘッジはやはりできないことになります。このような構造にあることを理解していれば、シェールオイル企業による増産がそう簡単ではないことがわかります。このようなコモディティ市場の本質を理解しておくと、他の投資家より一歩先に進むことができるでしょう。原油価格の動向だけでなく、米国の石油株を見る上でもぜひ参考にしたいところです。

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江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「1ドル65円、日経平均9000円時代の到来」(ビジネス社)
「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)

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