[ ここから本文です ]

特集1

2017年12月15日

第55回 短期金利の上昇と米国政府のインフラ投資に注目【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

米連邦準備制度理事会(FRB)は12・13日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を1.25-1.50%に0.25%ポイント引き上げることを決定しました。利上げは市場の予想通りで、利上げは今年に入って3回目となりました。また、18年と19年はそれぞれ3回ずつ利上げが実施されるとの見通しを示し、金利は長期水準の2.8%に達するとの見方を示しました。FRBは9月にも同様の見通しを示していました。FRBは声明で「労働市場が引き締まり続け、経済活動が堅調な速度で拡大していることを示している」としました。また、今回発表した経済見通しでは18年の成長率は2.5%になると予想し、前回の9月見通しの2.1%から引き上げました。18年の失業率は3.9%と予想し、前回9月予想の4.1%から引き下げました。ただし、インフレ率については、18年もFRBが目標とする2%をやや下回る水準にとどまるとしました。多くの市場関係者やエコノミストが、減税の経済への影響をそれほど重視していなかったことから、FRBが経済成長率の引き上げの背景を減税としたことはやや驚きでした。

今回の政策決定に関しては、賛成7、反対2でした。シカゴ地区連銀のエバンズ総裁とミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁が反対票を投じました。この点では、今回の決定はややハト派的だったといえます。ただし、彼らは来年の投票権を持っていません。そして、来年以降はタカ派的な地区連銀総裁が投票権を持つことになります。したがって、来年以降はFOMCの投票権を持つ委員による利上げを示唆する発言が増えそうです。いずれにしても、今回のFOMCでは、イエレン議長が来年2月に退任した後も、FRBは金融政策の正常化を進める姿勢が明確に示されたといえます。長引く物価低迷とトランプ政権が目指す減税で景気が過熱するリスクへの目配りが必要になるでしょう。FRBは08年の金融危機を受けて、政策金利を実質ゼロに引き下げました。その後は景気が持ち直したため、15年末と16年末にそれぞれ1回の利上げを実施し、17年は景気回復の基調が強まったことから、3回の利上げを実施しました。しかし、来年以降については、実現が視野に入った米税制改革が経済に及ぼす影響は、実際のところ不透明です。さらに、株価や商業用不動産など一部の資産価格が大きく上昇しており、利上げの必要性を念頭に入れた政策運営が求められます。大型減税で景気が過熱するようなことになれば、想定以上の利上げを迫られる恐れもあり、これが市場にショックを与えないか、注意深く見守ることになります。

一方で、FRBは物価が目標に到達する時期を19年と従来の予想を据え置いています。低迷するインフレ率に対して、利上げのペースのコントロールは非常に難しいでしょう。FRBが目標としているコアPCE物価指数が全く上がってきません。これでは積極的に利上げを行うことはできません。とはいえ、2年債利回りが上昇しており、上昇ペースの抑制が必要になる可能性もあります。もっとも、米国や日本などは、民間の資金需要が低迷しており、これがインフレ抑制につながっているといえます。賃金の伸びも鈍く、企業は業績を拡大しながらも、賃金の引き上げには慎重な姿勢のままです。結局のところ、インフレにするには、民間で余った資金を政府が使うことが必要といえそうです。その意味では、来年以降に想定される米国でのインフラ投資は、インフレにつながる可能性があります。インフレにすることが目的になってはいけませんが、結果的にそのような動きになり、来年以降はFRBの利上げが正当化される場面がみられるかもしれません。


20171215_emori_graph01.png

江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「1ドル65円、日経平均9000円時代の到来」(ビジネス社)
  「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)

口座開設をお考えのお客さま

口座開設・資料請求(無料)

全てのお取引はこちらから

ログインはこちら

 マネックス証券からのご留意事項

「特集1」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。

マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。
商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

↑画面上部へ