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特集2

2017年11月28日

第287回 リバーサル・レートが新テーマ?!ドル円下落の背景【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

11月13日、スイスのチューリッヒ大学で行われた黒田日銀総裁の講演が話題です。講演は『「量的・質的金融緩和」と経済理論』というタイトルでしたが、講演の中で注目を集めたのが「リバーサル・レート」です。

「リバーサル・レート」。耳慣れない言葉ですが、知らなくても当然。米プリンストン大学のブルネルマイアー教授が今年4月に公表した論文の中で提唱した新しい理論です。「過度の金利低下が、預貸金利ざやの縮小を通じて銀行部門の自己資本制約がタイト化し、金融仲介機能が阻害され、かえって金融緩和の効果が反転する可能性がある。」というもので、簡単に言うと、「金利の下げ過ぎはむしろ引き締め的となり逆効果である」とした理論。日米欧が繰り広げてきた大規模量的緩和を「長期化は百害あって一利なし」とも指摘しており、この理論は欧州中央銀行(ECB)がインフレ目標に到達していないにもかかわらず、緩和縮小を決めた判断に影響を及ぼしたとの議論も存在するようです。

黒田総裁は講演で「低金利環境が金融機関の経営体力に及ぼす影響は累積的なものである。こうしたリスクにも注意していく」とし、マイナス金利の影響に配慮。加えて「(銀行の財務悪化で)金融仲介機能が阻害され、かえって金融緩和の効果が反転する可能性がある」と、リバーサル・レート理論にも言及。日銀はこれまでにも「金融システムレポート」にて金融機関の収益力低下に伴う潜在的な脆弱性に言及していますが、黒田総裁の口からマイナス金利の影響への配慮、加えてリバーサル・レート理論を用いてのリスクへの言及には驚きを隠せず、これが足元での円高進行の一因と指摘する向きもあるようです。

同時に黒田総裁はこれまでと同じく「日銀はインフレに向けて強力な金融緩和を継続する」と発言しており、今すぐに金融緩和を止めると発言したわけではありません。しかし、このような発言をすれば、市場が敏感に反応する可能性がないわけではないことも熟知しているはずです。黒田総裁の発言の真意は何なのでしょうか。

実は、市場の一部には根強く「追加緩和政策」を期待する向きがあります。今年7月、新たに日銀審議員に任命された片岡剛士氏は9月の日銀金融政策決定会合で現行の「長短金利付き量的・質的金融緩和」の継続にただひとり反対票を投じました。新委員となり始めての議決で、ひとり他の委員たちと違う票を投じたというのは新日銀法下では初めての出来事なのだそうです。片岡氏は「現行の金融緩和は不十分」とし反対票を投じたのです。つまり、もっと緩和するべきと唱えたということです。この片岡氏の反対票を勇気ある1票と評するリフレ派の人々があり、今後これをきっかけに緩和強化の議論が闊達となるとみる向きが出てきていました。こうした市場の期待を「けん制する狙い」があったという見方がひとつ。
気が早い向きの見方だと、緩和強化のけん制にとどまりません。金利の上方修正に向けて「地ならしを始めた」と見る向きも。個人的には、まだ将来の緩和縮小に向けた発言であったとは思いませんが、しかし市場というのは新しいニュースが大好きです。黒田総裁の発言の変化に、将来の緩和縮小を織り込み始める可能性は否定できません。実際に、それまでドル/円相場は113円から114円台でのレンジ相場を続けていましたが、11月15日にレンジ下限を下方向にブレイク。円高進行となりました。

黒田総裁が2015年6月、ドル/円相場が124円台で推移していた際に「(実質実効為替レートからみて)ここからさらに円安はありそうにない」という円安けん制を行ったことで、ドル/円相場の上昇がストップしてしまった過去があります。黒田総裁の発言内容が曲解され市場が過敏に反応してしまったとして、円安を阻止する意図があったわけではないとの指摘もありますが、この発言が結果的に「黒田ライン」とか「黒田シーリング」などと呼ばれ、円安の限界ラインとなったことは否定できません。今後、黒田総裁が言及したリバーサル・レートが市場の新たなテーマとなってくる可能性があるならば、円安というより円高のリスクへの警戒が必要でしょう。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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